ミニ法律相談(Q&A形式)

高次脳機能障害について

Q. 昨年夫が交通事故に遭い、数日間意識不明となりました。
幸い命はとりとめ目に見える怪我は治りましたが、事故以来、物忘れが激しく、ちょっとしたことですぐ切れるなど人柄がすっかり変わり、仕事も続けられなくなりました。損害賠償でこの点は反映されないのでしょうか。

A. 交通事故によって ①頭部外傷を受け ②継続的意識障害を経て  ③意識回復後に認知障害(記憶・判断力・集中力低下など)と人格変化(攻撃的、感情的、被害妄想など)があるのであれば、 高次脳機能障害という脳の後遺障害が生じている可能性があります。
診断されれば9級から1級の後遺障害に認定される可能性があり、加害者に請求できる賠償額が飛躍的に増加します。
高次脳機能障害は目には見えない障害で、専門家の間で一般に認知されるようになったのも近年のことですから、 脳神経外科の医師であっても見落とすことがあります。
また、加害者側の保険会社がこれら高度障害の可能性を被害者に指摘し、専門医療機関での診断を促してくれる ようなことはまずありません。
正当な賠償を受けるためには、まずは弁護士にご相談のうえ、専門医療機関で診断を受けることをお勧めします。

 

成年後見について

Q. 今年80歳になる私の母には亡父が遺した多くの財産がありますが、 最近は認知症のせいで管理がうまく出来ず、それにつけ込んだ兄が金をちょくちょくと取り上げています。
このように兄から奪われた財産を母の元に取り戻すことは可能でしょうか?
また、成年後見制度というものを利用して、娘の私が成年後見人になれば、母の財産は私の自由になるのでしょうか。

A. 成年後見制度は、認知症や脳梗塞の後遺症などにより判断能力が低下した人の財産管理や身上監護(身の回りの世話)を援助するため、家庭裁判所に、その人の判断能力に応じて、後見人・保佐人・補助人(後見人等)を選任してもらう制度です。

お母様が認知症で判断能力が十分でないのに乗じて、その財産を、お兄さんが取り上げているということであれば、その行為は法的に違法と評価され、お母さんは、お兄さんに対し、奪われた財産の取り戻しを請求でき、お兄さんが任意で返さない場合は、裁判などで奪われた財産相当額の損害賠償請求をして、財産を取り戻すことができます。ただし、お母さんの認知症の症状次第では、そのような裁判上の手続きの当事者になること自体ができませんので、そのためにも、成年後見制度の利用が必要になってきます。

ここで、注意して頂きたいのは、後見人等に選任されれば一定の範囲で財産管理や身上監護の権限を与えられますが、これはあくまでも本人の財産や健康を守るために与えられる権限で、後見人等が自由に本人の財産を費消・処分することが許されるようになるわけではないということです。後見人等は定期的に財産管理及び身上監護状況を家庭裁判所に報告すべき義務を負いますし、これらの後見人等の業務を適正に行わないと家庭裁判所から指導を受け、仮に本人の財産を横領するなど不正な行為を行った場合は解任されたり、横領罪等の罪に問われることもあります。
ですから、そもそもこのようなことがないように、後見人等の選任に関しては、裁判所が本人の病状や親族間の関係などを調査して、適任者を選任することになっているのです。

もちろんご相談者が、自ら申立人兼成年後見人候補者として申立手続きをされること自体は可能です。しかし、今回のように親族間で対立があるような場合は、裁判所は、より客観的な立場で適正な財産管理等が可能になるということで、第三者である弁護士などを選任する可能性が高いでしょう。
いずれにしても、既に侵害されたお母様の権利を回復し、今後も引き続きお母様を法的に守っていくためには、早急に成年後見申立てを検討される必要があるでしょう。

当事務所では、成年後見制度に精通した弁護士が、ご本人やご家族の状況に合わせて適切な制度利用が可能となるよう、申立段階からサポートをいたします。まずは一度ご相談下さい。

 

内縁の妻の法的保護について

Q. 3年前よりある男性と同棲しており、諸事情で入籍していないため、内縁関係です。
その男性が独身女性と浮気をして 家を出て行ってしまいました。おかげで私は心労で入院してしまいました。
慰謝料や入院費用は内縁関係でも請求できるのでしょうか。

A. 内縁関係であっても、3年間の同棲という夫婦同様の共同生活を営んでいたと評価できるような実態があれば、婚姻に準ずる関係として一定の法的保護を受けられる可能性があります。
具体的には男性の不貞行為などによって内縁の不当破棄がなされ、内縁の妻が精神的苦痛を受けた場合は、離婚の場合と同じように、相手の男性に慰謝料を請求することができます。

この慰謝料請求権は法的には内縁の不当破棄という不法行為に基づき発生する損害賠償請求権ですから、質問者さんにそれまで既往症がなく、入院を余儀なくされた原因がもっぱら男性の不当破棄であることがある程度証明できるならば、入院費用もこの「損害」として加算できる可能性はあります。
また、お相手の独身女性が、あなたと男性の内縁関係を知った上で男性と関係を持ったのであれば、この方も男性と共同であなたに対して不法行為をはたらいたことになり、この方にも慰謝料等の損害賠償請求をすることが可能です。

しかしながら、「不貞」事実の立証は損害賠償を請求する側が負い、これ自体が必ずしも容易ではありません。
夜食事を親密そうにしていたり、車に同乗している様子の写真を撮るだけでは立証としては不十分でしょう。
まずは物的証拠をしっかりと確保した上で、早めに専門家にご相談されることをお勧めします。

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